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【10】‐3 高血糖の害

(1)血液浸透圧の上昇

では、糖尿病で高血糖だから、何が悪いのでしょうか。
高血糖の害悪とはなんでしょう。
以下に示すのは、1型糖尿病でも2型糖尿病でも、糖尿病であれば問題となる症状、合併症です。
人の身体には、生体内を一定の状態(恒常状態)に保とうとする巧妙な調節機構があります。
これをホメオスターシスといいます。

恒常性が保たれてこそ、生体内であらゆる化学反応がスムーズに働き、細胞活動が良好に保てるわけです。
このホメオスターシスは、血糖や血液の浸透圧、pH(酸塩基平衡)にも働いています。
高血糖によって、血液の浸透圧が著しく上昇します。
高血糖の害悪のひとつは、糖による血液の浸透圧の上昇です。
血液の浸透圧が上がると、細胞内の水分が血管内にひっぱられるため、細胞内は脱水になります。

また脳細胞が血液の浸透圧が高いことを感知して信号を発するため、のどが渇きます。
口から水分を摂取することで、身体の脱水を補正しようとするのです。
高血糖では細胞内脱水となり、のどが渇いてたくさん水分が欲しくなります。
また、高血糖では腎臓で精製中の原尿に糖が漏れ、その糖が腎臓から水分をひっぱるので、多尿となります。
高血糖によって血液の浸透圧が上がると、のどが渇いて、水分をたくさん摂るようになったり、尿の量が増えます。

高血糖と糖尿病性昏睡

高血糖下で、飲水と利尿のバランスが崩れると脱水となります。
脱水が極まると、意識がおかしくなったりケイレンするなど糖尿病性昏睡(高浸透圧性非ケトン性昏睡)となることもあります。
高齢者が糖尿病を発症した場合に、糖尿病性昏睡になりやすいのは、もともと高齢者が脱水になりやすいからです。
またインスリンが肝臓に有効に働かない結果として、肝細胞で糖を利用できず、ケトン体が過剰に産生されるようになります。
このケトン体は酸性の特性をもつため、血液のpHを下げ、糖尿病性昏睡(糖尿病性ケトアシドーシス)を引き起こすこともあります。

(2)糖異常代謝産物の害

もうひとつ、高血糖の害悪は、過剰な糖が代謝され生じる複数の物質が、血管障害や細胞障害性を持つことです。
通常であれば、血管内の糖はすみやかに肝臓や骨格筋でグリコーゲンに形を変え保存され、糖の余剰分は脂肪細胞に脂肪として蓄積されます。
糖尿病ではその行程がうまくいかず、食事のたびに多量の糖が体内をさまようことになります。
このあふれた糖が、異常な代謝経路に入ってしまい、血管障害・細胞障害性を持つ代謝産物の増加や活性化を引き起こします。
数多ある細胞に酸素や糖などの栄養を届け、物質をヤリトリするために、人の身体には血管が細かく張り巡らされています。
身体のすみずみの細胞にまで血流がゆきとどいた状態で、あらゆる臓器は正常に機能します。
高血糖はこの細かく張り巡らされた血管にダメージを与えるため、さまざまな臓器に深刻な障害が生じるのです。
糖尿病の三大合併症である糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害は上記により生じる微細血管障害、神経細胞障害が病気の本態です。

(3)大血管におこる動脈硬化

糖尿病は動脈硬化のリスク因子でもあります。
重要臓器である心臓や脳を栄養している太い血管に動脈硬化が起こると、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる重大な病気を発症します。