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【10】-7 妊娠糖尿病

(1)妊娠糖尿病について

妊娠中の母体に高血糖を認め、お産の後には正常化するものを、妊娠糖尿病といいます。
母体の高血糖はお腹の子どもに影響し、赤ちゃんが生まれてから低血糖となりやすかったり、母体に比して大きすぎる赤ちゃんになったりします。
妊娠に伴い、母親の身体にはさまざまな変化が見られますが、糖代謝にも変化が起こります。
インスリン抵抗性が上がって、高血糖となりやすくなるのです。
これは、お腹にいる胎児にとっては、糖分豊富な血液が胎盤に届けられるため、利に働きます。
しかし母体にとっては、インスリン抵抗性がついた分、膵臓から普段よりたくさんのインスリン分泌が必要となります。
膵臓に妊娠で需要が増える分のインスリン分泌能力が無い場合、妊娠糖尿病が発症します。

将来の2型糖尿病予備軍

妊娠糖尿病の場合、2型糖尿病を発症するカラクリとほぼ同じことが起こっています。
妊娠という一時的にインスリン抵抗性が増強した状態に対して、膵臓が余剰分のインスリンを分泌できない、ということです。
妊娠糖尿病の発症は、インスリン抵抗性のつきやすさや、膵臓のβ細胞の疲弊しやすさを表すものです。
事実、妊娠時に妊娠糖尿病を発症した方は、将来的に2型糖尿病となりやすいことが知られています。
私が医学生の頃には、妊娠糖尿病は妊娠時だけに見られる特殊な病態で、その後は予後良好な病気と習いました。
現在では、妊娠糖尿病の発症は、将来の2型糖尿病予備軍ということで、慎重に内科で経過観察されるべきものです。

(2)摂食障害妊婦さんは妊娠糖尿病になりやすい?

欧米人と比して、日本人はインスリン抵抗性がつきやすく、膵臓のインスリン分泌能が低い特性があります。
日本人としてのこの特性は、2型糖尿病のみならず、妊娠糖尿病をも発症しやすいことを示しています。
ここに過食症、摂食障害が加われば、2型糖尿病の発症、妊娠糖尿病の発症のリスクがさらに上がるでしょう。
過食による肥満があれば、膵臓のインスリン分泌消費が上がっている証拠で、それによる内臓脂肪の増加や高血圧、高脂血症はインスリン抵抗性を上げるでしょう。
やせていたとしても、過食や過食嘔吐行為は、高血糖や低血糖を引き起こしうるもので、その場合インスリンの分泌消費が上がり、インスリン抵抗性が上がりやすい、と言えます。
過食や過食嘔吐があると、妊娠時には妊娠糖尿病を、将来的には2型糖尿病を発症しやすいでしょう。
妊娠糖尿病について詳しく知りたい方は、【9】-13 妊娠糖尿病の概要をご覧ください。
摂食障害の女性が妊娠することについて詳しく知りたい方は、
カテゴリ:【03】【03】摂食障害と妊娠・出産・子育て

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