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【12】-2 アダルトチルドレンとしての特性

総論

摂食障害・過食症の方は、アダルトチルドレンに見られる特性を共通して持つことが多いようです。

アダルトチルドレンには、医学的には複雑型PTSD、DESNOS(Disorder of Extreme Stress not Other Specified)などの診断が当てはまるようです。

摂食障害に万引きをくり返す際の心理機制として、アダルトチルドレンに見られる特性が深く関わっています。

まず、自己イメージがあいまいで、過剰に自分に厳しく、自分を貶めて卑下するなど、自分いじめの傾向があります。

それがエスカレートすると自傷行為に至る場合もあります。

そうかと思うと、「自分ならば許される」というような尊大で誇大的な考えにとらわれて、身に迫る罪悪感を感じずに大胆な行為に及んだりします。

この両極端な二つの傾向は、真逆に見えるものの、自尊感情の低さを象徴するもので、同じコインの裏表のようなものです。

これは、アダルトチルドレンの、責任をとりすぎるか、責任をとらなさすぎるか、というような傾向にも表れています。

また、アダルトチルドレンは、「とことんやる」か「一切やらない」かしかないなど、両極端から両極端に走る傾向があります。

アダルトチルドレンには、そのままの自分で十分という感覚がありません。

これも自尊感情の低さから派生しているものです。

そのため、自覚の有無はさておき、常に痛いほどの寂しさや空しさを抱えています。

それゆえ、アダルトチルドレンは他人からの承認を渇望し、それが得られない時に非常に失望し、怒りや恨みの感情を抱くこともあります。

大抵、この怒りや恨みは表面化することなく、心身症や抑うつ傾向、無力感となって表現されますが、時にうっ積して爆発することがあります。

アダルトチルドレンは時として衝動的で、そういうときには後先を考えることができず、短絡的な行動を取ることもあります。

この衝動性、自分いじめの傾向から、いわゆる自暴自棄な行動に至ることも少なくありません。

アダルトチルドレンの多くは、目立たぬよう、他人に迷惑をかけぬよう、静かに人生を過ごしています。

しかし、これらの特性から、万引きなどの窃盗や違法薬物の使用などの犯罪行為、性的逸脱、反社会的行為へと駆り立てられる方がいるのも事実です。

参考文献:「アダルト・チルドレンと家族 -心のなかの子どもを癒す-」 斎藤学 著 学陽書房

さまざまな特性

(1)自分いじめ

アダルトチルドレンには、自分は罰せられて、叱られて当然の存在だ、という感覚があります。

これに支配されると、敢えて叱られるようなことをしたり、罰せられるような状況に自分を追い込んでしまいます。

摂食障害・過食症に見られる万引きでも、同じような心理的背景があります。

また、少年、少女に見られる思春期青年による万引き行為には、アダルトチルドレンの「自分いじめ」の傾向がある一方で、養育者、引いては社会に対して、強烈なメッセージを発してもいます。

本人にその自覚は無いでしょうが、おそらく摂食障害に見られる万引きにも同じ叫びが込められています。

それは、「苦しい」、「助けて」、という感情です。

(2)尊大で誇大的な考えと、うっ積した怒り

アダルトチルドレンの、「自分ならば許される」というような尊大で誇大的な考えにとらわれると、罪悪感を感じずに万引き行為に及ぶこともあるでしょう。

その背景には、アダルトチルドレンの他人への過剰な承認欲求と、それが満たされたなかったことによるうっ積した恨みや怒りの感情があります。

「どうして私ばかりが我慢しているのか。」「どうして私ばかりが不幸なのか。」

これらの恨みや怒りが爆発し、社会に向くと、復讐的に反社会的な行動に至る場合もあるでしょう。

(3)衝動性、自暴自棄

アダルトチルドレンは、後先を考えない短絡的な行動や、自暴自棄な行動を取ることがあります。

それは、衝動性と自分いじめの特性から説明できます。

時として衝動的であるというアダルトチルドレンの特性は、万引きなどの犯罪行為に対する閾値を低くするものです。

上述の、過食衝動に伴う盗み食いや、止まらない症状に強い不安を覚え、最終的に万引きをしてしまうという機序(【12】-2 ②、③)の背景にも、摂食障害・過食症に見られる、アダルトチルドレンとしての衝動性や短絡的な行動を取りやすい傾向が関わっています。

(4)解離性障害の併存

アダルトチルドレンには離人感といった解離を思わせる特性がありますが、摂食障害・過食症に解離性障害が併存する場合もあるでしょう。

解離に伴って、本人の意識がはっきりしない状態で万引きに至る、という可能性もあるかもしれません。

(5)嗜癖としての万引き

万引きは、くり返されるうちに「くせ」になり、嗜癖へと変貌していきます。

最初は上述のいずれかをベースとした万引きであったものが、くり返すうちに万引き行為自体が嗜癖的側面を帯びてくるのです。

もともと摂食障害・過食症は依存症であり、依存症は多重嗜癖に陥りやすいものです。

おそらく、摂食障害の方の万引きの初犯は、多重嗜癖としての万引き以外の要因であったはずです。

しかし、摂食障害の方が、万引きをくり返している場合、すでに万引き行為に嗜癖してしまっている場合がほとんどでしょう。

摂食障害・過食症の方にくり返す万引き行為がある場合、多重嗜癖としての万引き行為の合併を、当然あるものとして捉えるのが自然です。

摂食障害・過食症に、くり返す万引きを合併している場合、ことは、一刻の猶予もならない状況です。

止められない過食や過食嘔吐、チューイングが万引きを誘発し、回を重ねるごとに万引きは嗜癖として定着し、状況はどんどん悪化していくでしょう。

この場合、万引き行為をそれ以上嗜癖化させないためにも、一刻も早く、我慢することなく過食や過食嘔吐症状を止めることが、喫緊の最重要課題となります。