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【13】-2 摂食障害が患者さんから奪うもの

(1)病気はさまざまなものを奪う

病気である実感が湧かなかったり、病気の大変さが分からない状態は、摂食障害、過食症に良く見られるものです。
摂食障害、過食症の方は、病気に関することで特に、冷静に状況を見定めることができません。
摂食障害、過食症という病気は、心と身体に多大な悪影響を及ぼすものです。
摂食障害、過食症を放置すると、生きていく上でとても大切なもの、心と身体の健康、温かな人間関係、財産など、多くのものを失っていきます。
適切な判断力、行動力も、病気に侵され、患者さんから奪われ、失われてしまうものです。

過食衝動に襲われ、過食や過食嘔吐、チューイングに溺れた状態は、酒に酔った状態にも似ています。
かりそめの安心感に身を浸した酔っ払いの状態で、どうして、病気の厳しい現実を見据え、最善策を練ることができるでしょう。
また、摂食障害、過食症のなかには、比較的冷静に物事を見極めて、どう行動するのが良いか分かっていても、行動できない方もいます。
摂食障害、過食症を治そうとするとき、患者さん自身の、冷静で客観的な視点、適切な判断力、建設的な行動力は、すべての要素が揃って必要です。
摂食障害、過食症の患者さんは、こと病気に関することで特に、冷静で客観的な視点を失っているか、判断力が鈍っているか、建設的に行動できないか、あるいはその全てを失っているか、いずれかの状態にいます。

(2)どんどん身動きが取れなくなる

過食、過食嘔吐、普通食嘔吐、チューイングなど、明らかな摂食障害の症状があるのに、症状を止めるため、治すために一切行動しない人は、摂食障害、過食症に大勢いますが、それこそが病気の症状のようなものです。
一切行動しないのではなく、多くは自覚の無いままに、病気にからめ取られ、行動できなくなっているのです。
そして、患者さん自身が、摂食障害、過食症について知り、自分を病気と認める努力をしないかぎり、その傾向はますます固着していきます。
残念なことに、依存症の患者さんが病気の恐ろしさに気付いた時、すでに様々なことが手遅れになってしまっていることは少なくありません。
あなたが、過食、過食嘔吐、チューイング、下剤常用をしているのであれば、今が、あなたにとって、最も大きなチャンスのときです。
過食、過食嘔吐、チューイング、下剤常用など、症状に頼ることで、とにかくあなたは今まで生き延びることができました。
しかし、それと引き換えに、過食、過食嘔吐などの依存にふけるためにこそ、自らの可能性を狭め、選択肢や自由は奪われていったはずです。
今、摂食障害、過食症の傾向について知り、自身を病気と認める努力を始めることが、少ない中にも選べる選択肢が最も多く、不自由な中にも一番自由があるときです。