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【13】-3 摂食障害に見られる心理的特徴

(1)アレキシサイミアとは

摂食障害、過食症では、アレキシサイミア(失感情症)という心理的特徴を有することがあります。
摂食障害、過食症の患者さんは、特に、悲しい、寂しい、腹が立つ、つらい、苦しいなど、マイナスな気持ちに鈍感で、自分がどう感じているのかよく分からなかったり、なんとなく感じていても言葉にできなかったりします。
これをアレキシサイミア、内的感情の障害といいます。
アレキシサイミアに陥ると、身体の疲れにも気付けなくなるなど、身体感覚も鈍くなることがあります。
摂食障害、過食症で空腹感や満腹感が分からなくなるのは、過食衝動、やせ衝動の影響の他、アレキシサイミアによる身体感覚の障害も関係しているでしょう。

(2)アレキシサイミアは摂食障害、過食症の病状を悪化させる

アレキシサイミアは、危惧すべき状態です。
摂食障害、過食症の方は、過食、過食嘔吐、チューイング症状に自分の生活を奪われていることが、嫌で、つらくてたまらない、と本当は思っていても、全くそのように感じていない場合もあります。
過食、過食嘔吐、チューイング、下剤常用による悪影響で、心も身体も崩壊寸前だったとしても、本人だけがそのことに気付けません。
摂食障害、過食症に見られるアレキシサイミアは、病気の状態の苦しさを覆い隠し、病気の大変さを分からなくしてしまいます。
過食衝動に煩わされない状態で症状が止まってから、ようやく、自分がもう二度と戻れないと思うような苦しい状況にいたことに気付くケースは、多々あります。
一旦平静な状態になると、以前は「普通」と思っていた自分の状況を、「地獄」のように感じる方までいます。

アレキシサイミアは、摂食障害、過食症の病識の欠如、病気の深刻さの持続的欠如の悪化因子です。
医師、医療従事者にとって、問診や患者さんの訴えを聞くことは、診断・治療のためにも非常に重要なことです。
ところが、摂食障害の患者さんにアレキシサイミアがある場合、患者さんの心の底にある真のつらさや訴えを、患者さん自身が言葉にできないので、医師に伝えることができません。
そのために、患者さんと医師の間にすれ違いが生じやすく、そのすれ違いが治療離れという結果をまねきやすくなります。
摂食障害医療に携わる医療従事者、専門家、治療者は、アレキシサイミアの関与を念頭に置いて診療に当たるべきでしょう。