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【18】-3 婦人科疾患、妊娠合併症へとつながる「しくみ」

(1)生理不順だけではない婦人科疾患の数々

無月経、稀発月経などの生理不順が摂食障害に合併しやすいことは、よく知られているでしょう。しかし、過食と食事制限が、不妊、流産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群などの妊娠合併症にまで関連がありうることはあまり知られていないと思われます。

過食と節食あるいは絶食のくり返しによって、高血糖、高インスリン血症、インスリン抵抗性の上昇、高脂血症、高血圧、内臓脂肪の蓄積が促進されうることは上述しました。
近年、高インスリン血症、インスリン抵抗性の上昇が、無月経や稀発月経などの排卵障害、不妊、初期流産率の上昇など、女性の性周期、妊娠生理に重大な影響を及ぼすことが分かってきました。
原因不明の不妊症や初期流産の背景に、過食と食事制限のくり返しによって培われてしまった体質があるかもしれず、それはつまり、不妊や流産の背後に摂食障害・過食症・拒食症が隠れている可能性があるということです。

過食と食事制限のくり返しに伴い、からだにインスリン抵抗性の上昇、という体質がついてしまうと、2型糖尿病を発症しやすくなる他、妊娠をのぞんでいても妊娠しにくい、将来妊娠した時に流産しやすい、なんとか妊娠を維持できても妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を合併しやすい、などの婦人科疾患、妊娠合併症へとつながっていくのです。

(2)多嚢胞性卵巣症候群について

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)という、不妊症の原因としてよく知られる婦人科特有の病気があります。PCOSの原因ははっきりしていませんが、その病気のしくみには、内臓脂肪型肥満や、インスリン抵抗性の上昇が深く関わっています。もしかするとPCOSに悩む女性のなかには、過食と食事制限をくり返しているような摂食障害・過食症の一群が含まれているかもしれません。
過食と食事制限のくり返しによって、なんとか見た目を取り繕えていても、からだのなかはボロボロです。そのからだの変化は女性としての未来まで大きく変えてしまうものです。