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【19】-2摂食障害・過食症・拒食症は、なぜ便秘になるのか

(1)過敏性腸症候群の合併による便秘

こころとからだが互いに影響し合うことを心身相関といいますが、ストレスや極度の緊張がおなかの症状となって表れるものを過敏性腸症候群といいます。
摂食障害で過敏性腸症候群を合併していることは多く、ストレスや緊張でおなかが痛くなったり、おなかにガスがたまってぽっこりとふくれてしまったり、便がゆるくなりすぎたり、逆に固くなりすぎて便秘となったりします。

(2)からだのリズムの乱れ、自律神経系の乱れによる便秘

人の体には一定のリズムがあり、そのリズムは、「食べる」「眠る」で作られます。このリズムが保たれていれば、良い便が出るのは自然のことわりです。
規則正しい食生活と十分な睡眠は、からだのリズムを整え、このリズムに乗って体内のさまざまなしくみが複雑にやり取りし合い、食べ物の消化吸収、代謝がスムーズに進みます。
過食やそれに伴う節食や絶食、過食嘔吐は、そのからだのリズムをめちゃくちゃにするものです。からだのリズムが崩れると、便秘以外にも、おなかの不調、からだの不調につながるでしょう。
からだのリズムを整えるのに最も良いのは適切に食べ、よく眠ることですが、それがうまくできないのが摂食障害・過食症・拒食症であり、過食や過食嘔吐、絶食などの症状がある限り、摂食障害の人のからだのリズムは整いようがないのです。
自律神経のうち、副交感神経が活発になることで、消化液が分泌されたり、おなかがよく動いたり、消化管が活発に働きます。夜中の過食、不規則な食生活、過食による睡眠不足、嘔吐という消化管の逆流現象などによって自律神経系のバランスが崩れ、副交感神経の働きが衰え、おなかの動きが悪くなり、便秘になることもあるでしょう。

(3)過食の後に絶食や節食をするために生じる便秘

過食によってからだのリズムが狂うので、過食だけでも便秘の原因になりますが、過食を繰り返す方の中には、過食の後に絶食したり、極端に食事をセーブする方がかなりいます。
過食後の絶食や節食により、からだを飢餓状態に追い込むために、からだが省エネモード、溜め込みモードになって代謝が落ち、便秘になります。
嘔吐や絶食によって適度な量の食べ物が消化管内部を通らないために、おなかの働き(ぜんどう運動、消化管としての機能など)が弱まり便秘になる場合もあるでしょう。
過食と食事制限、その後の過食の爆発、また極端な食事制限の繰り返し、この悪循環によって、ますます便秘が悪化していきます。

(4)睡眠薬・入眠剤、抗うつ剤、抗精神病薬による便秘

摂食障害では、うつ病、双極性障害、不安障害の併存や、睡眠障害が見られること多く、それに合わせた薬物を処方されているケースもあるでしょう。
脳、神経に作用する薬は、副交感神経の働きを悪くしてしまう作用を持つものも多く、それに伴って便秘になる場合もあるでしょう。

(5)ミネラルバランスの異常に伴う便秘

摂食障害の症状として、過食嘔吐があったり、下剤・便秘薬、利尿剤の常用あるいは乱用がある場合など、筋肉の働きに作用するカリウムという血液のミネラル成分が低下することがあります。低カリウム血症によって腸の動きが悪くなるため、便秘となる場合もあるでしょう。
また、この低カリウム血症によって命を落とすこともある危険な不整脈を引き起こすことが知られています。過食嘔吐がある、下剤あるいは利尿剤を常用している方は、定期的な血液検査が必要です。

(6)強制的に排便を促す薬物、行為への依存の結果としての便秘

下剤・便秘薬や浣腸などの強制的に排便を促す手段にからだが慣れてしまうと、それらの刺激なしには排便できないからだになっていきます。
なんらかの理由でそういった刺激がなくなった時に、がんこな便秘になりうるでしょう。