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【20】-11 無排卵性周期症と無月経について

(1)無排卵性周期症とは

無排卵性周期症という状態がありますが、これは排卵していないのに、定期的に性器からの出血があり、まるで月経が定期的に来ているようにも見える状態です。
しかし、実際は、正常な性周期に見られる各種性ホルモンの分泌パターンとは、全く異なる状態になっていて、排卵を契機としたエストロゲン優位の状態(卵胞期)とプロゲステロン優位の状態(黄体期)の切り替えもなく、プロゲステロンが不十分なまま、持続的にエストロゲン優位な状態が続くことが多いようです。
長期的に無排卵性周期症を放っておくと、エストロゲンが子宮内膜に働き続けることで子宮内膜増殖症や子宮内膜癌の発症率が上がると言われています。
性周期が短い、あるいは出血量が少ない、出血期間が短いなどと感じている方は、そもそも排卵していない、無排卵性周期症のことがあるかもしれません。
また、過食、過食嘔吐、チューイング、過食と絶食のくり返しなど摂食障害・過食症・拒食症の症状がある方は、定期的に出血していて順調に生理が来ているように思えても、実は過食や過食嘔吐のせいで無排卵性周期症を発症している可能性があります。
婦人科受診が必要でしょう。

(2)低容量ピルの効能

低容量ピルには、さまざまな効用があります。
ピルの組成は簡単に言って、エストロゲンとプロゲステロンの合剤です。
低容量ピルは、避妊の目的でも用いられてきましたが、そのしくみは、エストロゲンが外から供給されることでからだの中の性ホルモンの連携が崩れ、排卵に必要なLHサージが起こらなくなるためです。
排卵しないために妊娠しません。
排卵しないものの、ピルで供給されるエストロゲンとプロゲステロンが子宮内膜に作用するため、ピルの休薬期間に月経のような消退出血が起こるわけです。

卵巣と子宮を最低限の状態に保つ

無月経を長期間放置すると、卵巣・子宮への充分な血流が無くなり、卵巣や子宮のつくり自体が変わってしまうと、以後2度と妊娠できなくなる危険性があります。無月経、稀発月経のときにピルが用いられるのは、ピルから供給されるエストロゲン、プロゲステロンが卵巣・子宮の血流を保ち、定期的に子宮内膜の変化を起こすことで、卵巣、子宮の状態を最低限良好な状態に保つことにあります。
場合によっては、卵巣、子宮への血流改善が、追い風となって次回の排卵を促すこともあるでしょう。
その他、ピルに含まれるプロゲステロンが月経過多症状や、月経痛の緩和に働くため、低容量ピルは月経困難症、子宮内膜症、子宮筋腫の症状改善に用いられることがあります。

(3)低用量ピルの注意点

低容量ピルを使うことで、1ヶ月に1回生理が来ているように見えても、からだのなかのホルモンパターンは、自然の生理のときとは全く違っています。
低容量ピルを使用し続ける限り、排卵しません。排卵しないということは、排卵前後のドラマティックな各種性ホルモンの分泌パターンが失われるということでもあります。
自然な生理では、LHサージが起こる前にエストロゲン単独での分泌の高まりがありますが、ピルを使うと、このエストロゲンサージも起こり得ません。
正常な性周期では、1ヶ月のサイクルのうち、卵胞期においてエストロゲン、なかでも女性ホルモン活性の高いエストラジオールが単独でメインに働き、排卵を境に黄体期となりプロゲステロン優位に働く、というパターンになっています。
これは、排卵してこそ得られる切り替えであり、自然に定期的に生理が来ている女性のからだにこそめぐる、約束されたパターンなのです。
低容量ピルを飲むことで、こういう自然の分泌パターンを得ることはできません。