【20】-5女性ホルモン・エストロゲンとは
(1)女性の魅力を高めるホルモン
エストロゲンは卵巣自身に働き、しかるべき卵胞を成熟させ、その卵胞が排卵した時、首尾よく受精に至るように準備するホルモンです。卵巣自身に働きかける他、子宮や卵管、膣にも受精を促す方向で働きます。
エストロゲンは女性ホルモンという名のイメージどおり、女性のからだのラインを美しく保つような作用があるなど、女性を女性らしく美しくするためのホルモンです。エストロゲンの働きによって女性としての魅力をより一層輝かせ、異性をとりこにして、排卵に備えて精子を取り込み受精する、そのためのホルモンなのです。
ちなみにプロゲステロンにはエストロゲンを阻害するような働きもあるため、エストロゲンが女性ホルモンとしての真価を発揮するのは、エストロゲンのみの分泌が高まる、まさに卵胞期、とくに排卵前の卵胞期後期、ということになるでしょう。
このエストロゲン単独での分泌の高まりは、下垂体からのLH、FSHの助けのもと、卵胞が成熟する過程で、その卵胞の莢膜細胞、顆粒膜細胞の共同作業でもって成されるものです。女性のからだの性周期が整っていればこそ、つまり、自然の生理のもとでこそ、卵胞期後期にエストロゲンの高まりが起こり、異性をとりこにすべく、その真価が発揮されます。女性らしく、最も美しく、魅力的になるのです。
(2)エストラジオールとエストロン
エストロゲンにはいくつか種類があり、もっとも女性ホルモンとしての活性が強いのがエストラジオールで、このエストラジオールこそ、卵胞期後半に活発に顆粒膜細胞から分泌されるエストロゲンです。
卵巣以外から女性ホルモンが分泌されることもあります。女性のからだにも少量ながら男性ホルモンが産生されており、それは卵巣の他、副腎という臓器から分泌されます。この男性ホルモンは、脂肪組織においてエストロンという女性ホルモンに変化します。脂肪細胞には男性ホルモンから女性ホルモンに変化するのに必要なアロマターゼという酵素が存在するためです。エストロンはエストラジオールよりは女性ホルモン活性に劣りますが、このしくみによるエストロンの供給によって、閉経後もエストロゲンが賄われています。
(3)エストロゲンの作用
エストロゲンの作用は多臓器に渡り、食欲を抑える作用や、骨格の維持(骨代謝への作用)、コレステロールを下げる作用などもあります。エストロゲンは骨粗しょう症、高脂血症といった病気の発症抑止に関わっていると考えられています。
また、エストロゲンには子宮内膜を分厚くさせる作用があるため、性周期が正常に刻まれず、エストロゲンがプロゲステロンよりも強くダラダラと効果を発揮する状態は、子宮内膜増殖症や子宮体癌の発生の引き金となるなど、むしろ病気の危険が出てきます。
エストロゲンが、からだに害悪とならず、その特性をいかんなく発揮するには、からだに薬もなにも加えない状態、自然な状態で定期的に排卵があること、つまり、自然な営みの中で正常な性周期をくり返すこと、これに限るのです。