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【3】-2 摂食障害と妊娠中の体重管理

(1)体重増加に対するジレンマ

ふつう、妊娠すると体重が増えるのが当たり前です。

おなかの子どものためにも、母体に余分な蓄えが必要だからです。

それに加えて、
おなかの子どもに栄養と酸素を送るための胎盤の分、
おなかの子どもの分、

母体の体重が増えます。

妊娠にしろなんにしろ、
体重が増えるという事実は摂食障害の女性にとって、
耐えがたい嫌悪感や恐怖、不安を誘発しうるものです。

おなかの赤ちゃんのために、
ある程度体重を増やすことが必要であると分かっても、
体重が増えることへの嫌悪感や恐怖、不安がなくなるわけではありません。

赤ちゃんのためにも体重を増やした方が良い、
でも、太りたくない。

両極端な二つの感情は、妊娠している母体にとって重い負担となるでしょう。

食欲なのか衝動なのか

ふつう、動物は人間のようにカロリー計算ができなくても、
妊娠などの身体の変化に応じて必要とされる栄養素を摂取し、ちょうどよい体重変化を果たします。

身体が求める分を摂取しているのです。
摂食障害の場合、この身体の求める食事のしかたが分かりません。
過食衝動なのか、
あってしかるべき食欲なのか、

分かりません。

おなかがいっぱいになるという感覚があいまいで、
どれぐらいが自分の適量なのかも分かりません。
体重を増やしたくありません。

摂食障害があると、妊娠によって身体が求める分の自然な栄養補給ができないのです。

(2)体重管理の難しさ

摂食障害には、
やせ衝動、過食衝動があります。

やせ衝動も過食衝動も、
患者さんの意志の力でコントロールできるものではありません。

摂食障害の方が妊娠すると、やせ衝動により 妊娠しても体重を増やせないことがあります。

母体の体重が順調に増えないと
おなかの子どもをささえる胎盤の成長に影響し、おなかの子どもが栄養不足に陥る危険があります。

胎盤が十分成長できなければ、流産にもつながるでしょう。

母体の体重が十分に増えないケースがある一方で、
過食衝動によって、母体の体重が増えすぎてしまうケースもあるでしょう。

母体の体重が増えすぎてしまうと、妊娠中毒症などのリスクとなります。

妊娠中毒症は母児ともに危険にさらされることのある妊娠合併症です。

妊娠で体重が適度に増えることは、
母体の生命の安全のため、おなかの子どもの健やかな成長のために必要不可欠なことなのです。

摂食障害を抱えた上での妊娠は、
母体の体重が増やせなかったり、逆に増えすぎたり、など、
母体の体重管理にも困難を伴います。