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【9】-14 妊娠糖尿病と摂食障害のカンケイ

(1)妊娠糖尿病になりやすくなる

摂食障害を患っていて妊娠前に肥満体型であれば、妊娠糖尿病や、糖尿病合併妊娠となりやすいでしょう。
摂食障害の症状である過食があれば、妊娠前の体型に関わらず、妊娠糖尿病、2型糖尿病を発症しやすくなるでしょう。
まったく同じ体質の人が二人いると仮定します。
一方に過食を認める場合、過食を認める方でよりインスリン分泌が必要となります。
膵β細胞のインスリン分泌能力には上限があります。
必要であればあるほど無限に湧いてくるというものではありません。
過食は、いわばインスリンの無駄遣いです。
過食が無い場合に比較すると、過食がある方が、早期にインスリン分泌不全が生じると考えられます。
摂食障害では、過食症状を認める場合、妊娠糖尿病・2型糖尿病を発症しやすいでしょう。
また、妊娠前に肥満体型である場合も、妊娠糖尿病・2型糖尿病を発症しやすいでしょう。

(2)「やせ」と妊娠糖尿病

妊娠前に「やせ」であっても、妊娠糖尿病となりやすいようです。
20歳時のBMI 18未満のやせ女性はBMI 18以上の女性と比して妊娠糖尿病の発症率が高かった、という報告があります。
これは日本人を対象としたものです。
「やせ」体型の人は、妊娠による身体の変化でインスリン分泌不全を呈しやすいのでしょうか。
妊娠糖尿病は、2型糖尿病発症予備軍でもあります。
日本人の2型糖尿病の半数は肥満を背景としないインスリン分泌不全型です。
「やせ」を伴った若い女性には、インスリン分泌不全型の2型糖尿病の予備群が多いのでしょうか。

(3)低出生体重で生まれた結果としての「やせ」

若年期に「やせ」で、将来的に妊娠糖尿病を発症する女性のなかに、低出生体重で生まれた方も含まれているでしょう。
低出生体重児が将来的に妊娠糖尿病や2型糖尿病となる機序は、インスリン分泌不全が考えられています。
低出生体重児は、生きていく上での余力がそれほどたくさんありません。
その余力が少ない結果が「やせ」としてあらわれている可能性もあります。
母親が摂食障害を患っているがために「やせ」の状態で妊娠し、その影響で子どもが低出生体重で出生することもあるでしょう。
その子どもは将来的に妊娠糖尿病や2型糖尿病になりやすい体質となります。
母親が摂食障害であれば、その子どもも摂食障害となる可能性があります。
子どもが摂食障害を発症していれば、若年期の「やせ」はある意味当然の結果です。
若い頃に「やせ」があり、妊娠時に妊娠糖尿病を発症する女性の中には、このような方もいるはずです。
若年女性の「やせ」の群で、なぜ妊娠糖尿病の発症率が高いのか、今後の知見が待たれます。