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【9】-19 Barker仮説にみる子孫への影響

(1)小児期の生活習慣病、その先に

母親の妊娠前の「やせ」、妊娠中の体重増加不良が原因で、低出生体重児として出生した方がいたとしましょう。
新生児期のたくさんの困難を乗り越え、子どもが成長できたとします。
しかし、子宮内低栄養のあった子どもには生活習慣病の素因が形成されています。
その方は将来、肥満・高血圧・高脂血症・2型糖尿病を発症しやすいでしょう。
子宮内(胎児期)低栄養は小児期の生活習慣病の要因としても知られています。
その方は、場合によっては小児期に生活習慣病を発症するかもしれません。
生活習慣病のその先は、心筋梗塞や脳出血、脳梗塞の発症です。

(2)生活習慣病の訴因は受け継がれる

母体の妊娠前の「やせ」か妊娠中の体重増加不良が原因で、低出生体重児として出生した方が、女の子だったとします。
その生活習慣病の素因は世代を超えて受け継がれる可能性があります。
低出生体重であった女性は低出生体重児出産をしやすいためです。
子宮内低栄養によって胎児期に受けた卵子への影響が、将来の低出生体重児の出産と関係しているかもしれません。
このことは生活習慣病の素因が連綿と受け継がれていく可能性を示します。

リスクが増幅する可能性

また低出生体重であった女性は、「やせ」以外の子宮内低栄養をまねく妊娠合併症にもなりやすいことが知られています。
妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病です。
妊娠高血圧症候群や重度の妊娠糖尿病は、胎盤機能の低下により胎児に低栄養を引き起こします。
このことは、子宮内低栄養を経験した女性が妊娠したときに、子宮内低栄養の環境がその女性の子宮内、胎内環境で増幅されうることを示します。
子宮内低栄養によって胎児がこうむる害は、ただ受け継がれるだけでなく、さらに増幅されて子孫に受け継がれる可能性があります。
やせた状態での妊娠や妊娠中の体重増加の過少は、子どもに害を及ぼします。
妊娠する前から「やせ」があって、妊娠中も体重増加が不良である場合、その影響は最も大きく出るでしょう。
このことについて、医療従事者も一般の方々も十分に知る必要があります。