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【9】-2  妊娠初期~着床後~

(1)胎盤の基礎ができ始める

受精卵の発生から7日前後で、胎児は母体の子宮に着床します。
着床してからは胎盤の基礎となるしくみが刻一刻とできあがっていきます。
着床の前後から、胎児は母体から栄養を得ています。
胎盤ができる前の胎児は卵黄嚢で栄養されている、という表現もあります。
しかし、卵黄嚢の内容液は、胎児が胚盤胞の状態のときに母体の子宮内腔の分泌物が取りこまれたものです。
胎児が卵黄嚢で栄養されている時期にも、母体の状態はすでに胎児に反映されています。
着床後には、母親から栄養や酸素をもらうための基盤がしっかりしていきます。
これは、母親の現在進行形の栄養状態が、胎児に反映されるようになるということです。
しかし、発生の初期には、母体に比して胎児は非常に小さい状態です。
そのため、母体の栄養状態が一時的に悪くても胎児は持ちこたえられるようです。

母体そのものが胎児の基盤となる

また、人の身体には常に代謝回転があります。
人の筋肉や骨は、一部壊され、一部新しく作られています。
この代謝回転の際、蛋白質やカルシウムが母体の血液に放出されます。
母親の口にするものだけが胎児を養うのではなく、母親の身体それ自体が胎児の栄養となります。
母体の基盤がしっかりしていれば、「つわり」で母親が一時的にものを食べられなくなっても、赤ちゃんに大きな影響がでないのはそのためでしょう。
母体の基盤がしっかりとできている場合とは、母親となる女性がそれまでの人生を良好な栄養状態で過ごし、母体となる身体に各種栄養の蓄えが十分にある状態です。
着床後は、母体と胎児は胎盤の基礎となるしくみでもってしっかりとつながります。
胎児は母親の血液から生命維持に必要なほとんどすべてのものを得ています。
母親が口にするものと、母親自身の身体でもって、母親は胎児を100%養っています。
母親の栄養状態が悪いことが、胎児に影響を与えないわけがありません。
母親の状態は、その血液や分泌物を通して全て胎児に伝わっています。
妊娠前から母親に栄養不良の既往があり、母体としての基盤がしっかりしていないことが予測される場合、妊娠中の母親の栄養不良はより深刻な影響を胎児に及ぼすでしょう。

(2)妊娠初期・着床後と摂食障害のカンケイ

摂食障害では、摂食制限(拒食)、普通食嘔吐やチューイング、過食後の絶食などの症状があります。
妊娠のこの時期に、絶食期間が重なったとします。
絶食によって引き起こされる母体の低血糖や脱水は、胎盤形成に悪影響を及ぼすでしょう。
胎盤は胎児にとって命綱となるものなので、胎盤形成が悪いと、胎児の成長に大きく影響します。
母体の低血糖や脱水によって胎盤形成がうまくいかず、流産するかもしれません。
絶食に限らず、「著しいやせ」のある方にも、上記のことがあてはまります。

胎児にとって、母親の口にするものと母体そのものが栄養源です。
摂食障害のために母親に「やせ」がある場合、母親のやせた身体は栄養源として不十分でしょう。
「つわり」などで赤ちゃんに影響が出ないのは、妊娠までの母親の栄養状態が良かった場合、と考えてください。
やせのある妊婦さんが、「つわり」などで一時的にものが食べられなくなったら、あっというまに胎児を養えなくなるかもしれません。
摂食障害は上手に栄養が摂れない病気です。
摂食障害が若年発症・慢性化している場合、栄養不良の状態はその女性の内臓や骨はもちろん、卵子をも確実に蝕んでいるでしょう。

着床後に起こりうるリスク

母親に摂食障害がある場合、この時期に起こりうる危険は以下のようなものです。
胎児の成長・胎盤形成がうまくいかず流産する危険がある。
胎盤形成が不十分になると、のちの胎児の成長が妨げられ、子宮内胎児発育不全となる可能性がある。