摂食障害のホームページ



【9】-24 妊娠中の食事と摂食障害のカンケイ

(1)食糧過剰への苦しみ

摂食障害を患っている場合、食料が十分にある良い環境にいても、栄養状態を良好に保つことは非常に難しいことです。
摂食障害では、食べ物の選択肢が限られていることが多く、栄養バランスが偏りがちです。
過食衝動にかられた時には食事内容を考える余裕などありません。
やせ衝動のため、身体に必要な量のエネルギーを摂取できないこともあります。
多種類の食品をバランスよく食べても、排出衝動が起これば、それを嘔吐せざるをえません。
摂食障害の方の多くが、食料過剰の環境に苦しみや辛さを感じています。
この地球上で食料豊富な環境がいかに恵まれているか、患者さん本人も分かっています。
しかし、その食料過剰の環境で症状が増え続けていく苦しみは、経験した人にしか分からないでしょう。

(2)「ふつう」とどう違うか

ふつうの妊婦さんは、その個人にとって最も至適な体重増加を、ちょうどよいスピードで果たすことができます。
妊娠に伴い母親の必要摂取エネルギーは増えますが、そこまで大きな注意を払うことなく妊娠中の食生活に適応していきます。
多彩でバランスのとれた食生活を維持することに過剰な努力は必要なく、大きなストレスを伴うこともありません。
さほど意識することなく、安定した妊娠分娩経過を過ごし、元気な子どもを産んでいます。
彼女たちは自然な食行動を身につけているからこそ、それができるのです。
自然な食行動とは、身体が求める食べ物を摂取し、正常な満腹感とともに食事を終えるということです。

自然な栄養摂取ができない

身体が求める食べ物を自然に摂取できるということは、その方に必要な、現在の科学で分かっていない栄養素までも自然に摂取できるということです。
摂食障害を患っていると、これができません。
過食衝動の影響で、いつでもなんでも食べたいのです。
自分の一人前がどれぐらいの量か分からず、正常な満腹感を感じることができない方がほとんどです。
やせ衝動の影響で、妊娠したからには当然の体重増加に抵抗がある場合もあります。
しない方が良いことを知っていても、やせ衝動・排出衝動から嘔吐やチューイングをしてしまいます。
摂食障害では、過食衝動・やせ衝動・排出衝動に塗りつぶされてしまい、自然な食行動を取れません。
摂食障害を患っている方が妊娠した場合、妊娠時の体重増加がうまくいかないのは当然のことです。