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【9】-9 妊娠高血圧症候群の疫学

(1)母子の将来への影響

妊娠高血圧症候群を発症した女性とその子どもを長期間にわたって経過観察した疫学研究があります。
妊娠高血圧症候群を発症した女性も子どもも、その後に心血管系病変、脳血管病変を発症するリスクが高いことが分かったそうです。
妊娠高血圧症候群を発症した女性やその時の子どもは、将来心筋梗塞や脳出血などに罹患して死亡する危険性が高いのです。

(2)妊娠高血圧症候群とBarker仮説

母親の妊娠時に妊娠高血圧症候群があったとします。
そのときの子どもは将来心筋梗塞や脳出血を発症するリスクが高くなります、
その原因はBarker仮説から説明できます。
母親が妊娠高血圧症候群にかかると、お腹の子どもに子宮内胎児発育不全が生じます。
子宮内で胎児発育不全があった子どもは、将来的に肥満・高血圧・高脂血症・2型糖尿病などの生活習慣病の素因を抱えることになります。
これがBarker仮説です。
生活習慣病の素因は、万病のもとです。
生活習慣病が怖いのは、動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気につながるからです。
子どもに関していえば、心筋梗塞や脳卒中のリスクが上がることについて、Barker仮説で説明できます。
Barker仮説については今後さらに詳しく書きます。

(3)母体もまた低出生体重児であった場合

母親についてはどうなのでしょう?
なぜ妊娠高血圧症候群を発症したことのある方は、将来的に心筋梗塞や脳出血となるリスクが高いのでしょうか?
妊娠高血圧症候群に罹患することで、血管の炎症が母体の全身の血管に不可逆的なダメージを与えるのかもしれません。
母体の炎症が胎盤が破綻した部分から子どもにも伝わると、子どもの血管もダメージを受けるかもしれません。
また、妊娠高血圧症候群を合併するような妊婦さんの中に、自らが子宮内胎児発育不全であった方がいる可能性があります。
自分が産んだ子どもと同様、母体自身が胎児期に低栄養であった結果、生活習慣病の素因が形成されていた可能性です。
低出生体重児として産まれた女性は、将来の妊娠時に妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・早産・胎児発育不全を合併しやすいことが知られています。
母体となる女性が小さく生まれたことが妊娠高血圧症候群発症にどれぐらい関与するのか、今後の知見が待たれます。