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カテゴリ : 【03】摂食障害と妊娠・出産・子育て

【3】-1 摂食障害女性の妊娠

(1)妊娠すると摂食障害が治る?

摂食障害の女性が妊娠すると、どうなるのでしょうか。

もし、過食嘔吐をしている人がこれを読んでいたら、
あなたが妊娠したらどうなるか、想像してみて下さい。

愛する人との子どもを授かれば、病気が治ると思いますか?

妊娠すれば、さすがに症状が止まると思いますか?

摂食障害の患者さんの多くが、
妊娠によって病気が快方に向かったり、症状が止まることを期待するようです。

残念ながら、妊娠しても摂食障害が治ることはありません。

それどころか、病状が悪化することもあります。

妊娠によって、落ち着いていた症状が再発する方もいます。

妊娠が契機となって、摂食障害を発症する方もいます。
妊娠は摂食障害を悪化させることがあります。

(2)摂食障害とつわり

なぜ、妊娠が摂食障害の悪化をまねくのでしょうか。
ひとつには妊娠による身体的な変化が関係していると思われます。

妊娠初期に「つわり」という、嘔吐や吐き気などの症状がでることがあります。

これは摂食障害の症状である過食嘔吐や普通食嘔吐の誘因となります。

つわりがひどくなると、妊娠悪阻という病的な状態に陥って、
妊娠中に点滴などの栄養管理が必要になることがあります。

妊娠悪阻は精神的、社会的なストレスとの関与も指摘されています。
一部の妊娠悪阻と摂食障害は関連しているように私には思われます。
妊娠はまた、大きくなる子宮が母体の胃や腸を圧迫することで、

食べ物の停滞時間が長くなったり、
胃食道逆流が起きて腹部の不快な症状をまねいたり、嘔吐を助長します。

妊娠前から過食嘔吐が常習的であれば、胃食道逆流はより合併しやすいでしょう。

妊娠による生理的変化が嘔吐を助長し、これによって摂食障害の症状が増悪します。

(3)妊娠とストレス

妊娠が摂食障害の悪化をまねく要因として、母体の精神的なストレスの増加も挙げられるでしょう。

妊娠することで症状が改善することを期待する方が多くいる一方で、妊娠しても症状は止まらず、逆に増悪することもあるのが現状です。

摂食障害の方は罪悪感が強く、自分を責めてしまいやすい特性があります。

妊娠していて
自分1人の身体ではないにも関わらず、

過食や過食嘔吐、チューイングなどの症状が出続けることは、彼女たちの自責の念や罪悪感を大きく刺激するでしょう。

おなかの子どものためにも、
症状を止めたいと強く願いながらも、

それが叶わないときに、
彼女たちの受ける精神的なストレスは、はかり知れません。
そして、この大きなストレスが、次の過食や過食嘔吐、チューイングをまねくのです。
妊娠・出産は「あたりまえの生理現象」とも言えるでしょうが、
ときに命がけのことになりうる不安要素を含んだ、重大な女性のライフイベントです。

たとえ症状がおさまっていたとしても、妊娠という常と異なる状況は、摂食障害の女性に精神的なストレスを与えるでしょう。

妊娠に伴う精神的なストレスの増加は、摂食障害を悪化させるのです。