下剤の種類と効果の違い
下剤は、どんな時に使うもの?
下剤と一口にいっても、その効き方によっていくつか種類があります。
下剤の効果と副作用の両者を天秤にかけながら、やむなく定期的に用いるもの、緊急避難的に一時的に用いるもの、と用途も異なります。
下剤には、大きく分けて二つの効き方があります。
ひとつは、便に水分を蓄えやすくして、やわらかく膨張した便をスムーズに排出するタイプのもの(寒天、マグネシウム製剤、糖類下剤など)です。
副作用がそれほど強くないので、医師が患者さんに定期的に下剤を処方する場合、こちらを好んで処方することが多いでしょう。
もうひとつは、大腸を無理やりに動かして、便と水分を体外に排出してしまうものです。
この効き方の下剤を大腸刺激性下剤(センノシド、センナ、ダイオウ、アロエ、ビコスルファートナトリウム水和物、ビサコジル)といい、効果が大きい分副作用も大きいので、一時的、緊急避難的な使用が望ましいものです。
私たちの大腸
ここで、下剤がその効果を発揮する大腸について話しましょう。
大腸は、医学的に結腸といいます。
結腸には便塊を肛門側に運ぶという働きと、その過程で身体に必要な水分を便から再吸収し、便を適度な硬さにする、という3つの働きがあります。
食事から摂った栄養素の多くが小腸で吸収されますが、水分の多くは大腸で吸収されています。
結腸にはくびれた部分とふくらんだ部分が交互にあり、それらが連動して動くことで便が肛門側へ運ばれていきます。(ぜん動運動)
この動きは便塊そのものと自律神経系によって調節されています。
便塊によって大腸内腔が押し広げられることで、大腸のぜん動運動が刺激され、便がさらに肛門側に送り出されます。
内視鏡などで大腸内腔を観察すると、ピンク色のつるりとした表面をしていて、いかにもぬるり、ぬるりと便塊が移動していきそうです。
大腸のなかを程よい速度で便が移動する過程で、身体に必要な水分が大腸を通じて体内に再吸収されます。
水分の多い状態の便は、そうしているうちに、出口(肛門)に近付くほど適度な硬さの便になります。
寒天、マグネシウム製剤、糖類下剤などの下剤は、便塊を水分でもって柔らかく大きくすることでぜん動運動を促進しています。
一方、大腸刺激性下剤はぜん動運動に関わる自律神経系に干渉し、ぜん動運動を無理やり起こし、便や再吸収されるべき水分を体外に排出します。
下剤と漢方の違い
漢方薬と聞くとなんとなく安心感を覚えると思います。
漢方薬とは、薬効を有する植物由来の生薬を多種類配合したものです。
便秘に使用する漢方薬の多くに、大腸刺激性下剤としての作用を持つ「ダイオウ」が含まれます。
また、植物由来ということから、なんとなく安心と思われがちな「センナ」や「アロエエキス」も、大腸刺激性下剤に分類されます。
便秘に用いる漢方や植物由来をうたう市販の便秘薬にも、大腸刺激性下剤に見られるような副作用や後遺症が等しく起こるということです。
下剤として何を使っていますか?
ドラッグストアには下剤、便秘薬、と名のつくものがたくさん陳列されており、とても簡単に手に入れられます。
薬には有効成分があります。
まずはあなたが使用している下剤・便秘薬はどういう成分からできているのか調べてみましょう。
薬局で手に入れられるような市販薬であれば薬の箱に、処方薬であれば薬局でもらう用紙に記載されていることが多いでしょう。
下剤として習慣性が少なく比較的安全とされているのは、マグネシウム、寒天、D-ソルビトールなどの膨張性下剤や塩類下剤、糖類下剤などです。
下剤としての効果は強いものの、習慣性が強く、場合によって深刻な副作用や後遺症が心配されるのは、センノシド、センナ、ダイオウ、アロエ、ビコスルファートナトリウム水和物、ビサコジルなどの大腸刺激性下剤です。
市販の便秘薬のほとんどに、副作用や後遺症が心配される大腸刺激性下剤が含まれています。
下剤・便秘薬が簡単に手に入るからといって、安全であるとはいえません。
摂食障害の方にオススメできる下剤
摂食障害の方にオススメできる下剤はありません。
摂食障害の方は、下剤常用・乱用の危険性が非常に高いからです。
あなたは、どうですか?
あなたが使用している下剤はなんでしょう。
薬局で簡単に手に入れられるような便秘薬でも、深刻な副作用や後遺症につながる大腸刺激性下剤が含まれています。
また、病院で処方されている漢方だったとしても、大腸刺激性下剤を含む可能性もあります。
あなたはいつごろから下剤を用いていますか?
規定量を守れていますか?
下剤を使用し始めた時期と今を比較して、1回に飲む量や回数が増える方向に変化していませんか?