利尿剤ってなんだろう
利尿剤って何?
利尿剤は尿とともに体内の水分を体外に排出します。
利尿剤は腎臓に直接働きかける薬です。
腎臓は、体内で水分バランスとミネラルバランスをつかさどる「かなめ」の臓器です。
体内の水分バランスをつかさどる腎臓に直接作用する利尿剤は、体内から水分を追い出す力が強力です。
効果が強い薬は、その分副作用も強いものです。
利尿剤の副作用として、脱水とむくみ、ミネラルバランスの異常、利尿剤が腎臓を痛めること(腎障害)、が挙げられます。
利尿剤を使いこなすのは非常に難しく、高度の専門性を必要とします。
通常は、十分な医学知識と経験を持つ医師が使用する薬なのです。
にもかかわらず、現在はインターネット上で比較的容易に利尿剤を手に入れることができるようです。
簡単に手に入るからといって、その薬が安全であるとは限りません。
利尿剤の効果と副作用
人の身体の大部分は水分ですから、利尿剤を使用すれば一時的に体重が減少したり、むくみが改善することがあります。
しかしそれはあくまでも一時的な効果です。
利尿剤を使用したことによりミネラルを調節するホルモンバランスが変化し、むくむようになります。
むくみとは、医療用語で言うところの浮腫です。
下剤常用や乱用に伴い次第にむくむようになるのも、同じ機序です。
利尿剤や下剤によって体内の水分が減ると、ミネラルコルチコイドであるアルドステロンというホルモンが活発に分泌され、身体が水分を蓄えようとします。
結果、むくみや体重増加が起こります。
体内で多くを占める水分をつかさどるホルモンバランスが崩れているので、体重の変動も激しくなるでしょう。
副作用のむくみに対して利尿剤や下剤をさらに増量すると、アルドステロンもさらに活発に分泌されることになり、さらにむくみようになります。
このアルドステロンは血中のカリウムを低下させる働きがあるので、下剤や利尿剤の副作用である低カリウム血症がより悪化する場合もあります。
低カリウム血症で身体の筋肉がこわばったり、便秘が悪化したり、腎障害が引き起こされたりします。
なにより、低カリウム血症は致死的な不整脈につながることもある、厳重な注意が必要な病態です。
むくみに対して利尿剤の量を増やして対応すると、ひと回りしてまたむくみが悪化、利尿剤の量が増える、下剤常用・乱用のときと同様の悪循環に陥るのです。
利尿剤は腎臓に直接働きかける薬ですから、腎障害が起こる危険もあります。
利尿剤の増量でその危険は増すでしょう。
摂食障害の方で、利尿剤の乱用によって、身体がこわばり動かなくなって救急搬送された方がいます。
おそらく低カリウム血症によって身体の筋肉の異常が起こったのだと思います。
もし呼吸を担う筋肉までこわばってしまったら、呼吸が止まっていたかもしれません。
利尿剤の乱用は、命の危険に及ぶことがあります。
利尿剤を自己判断で使用している方は、脱水の程度、低カリウム血症などのミネラルバランスの異常、腎障害など、医療機関で診てもらった方がよいでしょう。
利尿剤を自己判断で飲み始める、量を変える、飲んでいた利尿剤を急激に中止する、などは、利尿剤の薬としての力を考えると、非常に危険なことです。
医療機関の受診を強くおすすめします。
下剤や利尿剤の乱用
摂食障害の場合、下剤を常用・乱用するようになって、身体のむくみが気になるようになった方が、利尿剤を使うようになり、下剤乱用+利尿剤乱用の悪循環のループにはまりこんでしまうことがあります。
便や尿が多量にでるという下剤や利尿剤の薬効や、その結果である体重の減少(脱水)は、摂食障害の根本的な部分である、「排出衝動」「やせ衝動」を刺激します。
そして下剤や利尿剤の副作用であるむくみや体重増加は、摂食障害における「やせ衝動」を刺激して、また下剤や利尿剤を使ったり増量することになります。
下剤乱用や利尿剤乱用を伴う摂食障害の方が、乱用に至る悪循環のしくみや、乱用による身体のさまざまな不都合を理解しても、乱用を止めることは非常に困難です。
下剤・利尿剤乱用の悪循環のしくみやそれに伴う身体合併症を知っておくことは必要なことですが、摂食障害の方への下剤や利尿剤乱用の抑止力にはなりません。
摂食障害の方にとって、下剤や利尿剤の副作用である身体のむくみや体重増加は、どんな手を使ってもすぐにも解消したいほどの耐えがたい苦痛を伴います。
健康な人であっても「耐えがたい苦痛」があれば、その後のことを気にする余裕などなく、いまできることをするはずです。
下剤や利尿剤乱用によって起こるのは、簡単に言えば慢性的な脱水のみであって、水分が減ったことで体重が減少することはあっても、美しく痩せることはありません。
さらに慢性的な脱水によってむしろ浮腫が起こってしまいます。
下剤や利尿剤乱用は薬の増量が増量を呼び、泥沼化します。
これらを十二分に理解していながら、利尿剤や下剤乱用を止められない方、あるいは使い始めている方も、かなりの数いるのではないかと、私は思います。
下剤や利尿剤の乱用を止めるときにはもちろん、薬剤の副作用の問題があるためその使用中も、医療機関受診が必要です。
下剤や利尿剤など、乱用薬剤の中止には大きな困難が伴うでしょう。
それは、下剤や利尿剤乱用の根本に摂食障害の本質が深くかかわっているからです。