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【9】-23 日本人妊婦の体重増加管理は難しい?

(1)身体の余力と民族性

人の身体には余力というものがあります。
その余力の幅には個人差、民族差があるようです。
妊娠は、女性にとって身体の余力を十二分に必要とする事態です。
日本人には、肥満を伴わないインスリン分泌不全型の2型糖尿病が多いなどの特徴があります。
「やせ」のある日本人若年女性に妊娠糖尿病が合併しやすいという特徴もありました。
私たち日本人には、民族差のためか、その他の理由かはっきりしませんが、この身体の余力がたくさん備わっていない人が多いのかもしれません。
それはちょうど、低出生体重児として生まれた女性が、妊娠時に妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を合併しやすいことと似ています。

(2)低出生体重児と身体の余力

低出生体重で生まれると、身体の余力が少ないことが多いようです。
低出生体重で生まれた女性が妊娠したときに妊娠合併症が起こりやすいのは、妊娠に十分耐えうるまでの身体の余力がないからです。
低出生体重児であった女性が妊娠した時に、その妊娠中の体重管理はおそらく難しいものになるでしょう。
少なすぎると胎児に低栄養の悪影響が蓄積し、多すぎると母親に妊娠合併症が増えることが予測されるからです。
この場合産婦人科医は、妊婦さん個々の体質やお腹の赤ちゃんのことなど、さまざまなことを考慮して母体の体重管理を行い、注意深く妊娠分娩経過を見守る必要があるでしょう。
日本人女性が妊娠した時、その方にふさわしい妊娠中の体重増加を促すためには、微妙なさじ加減を必要とする方が多いかもしれません。

(3)妊娠中の体重管理と医療従事者の認識

安定した妊娠分娩経過を過ごすため、また、赤ちゃんの健康のため、妊娠中の体重増加不良は避けなければなりません。
しかし、日本人としての体質を考慮したり、余力が少ないと思われる女性では、妊娠中の体重増加過剰は妊娠合併症を誘発することになるでしょう。
妊娠中の体重増加過剰がいかに不利に働くかを知っている産婦人科の医師は多いと思います。
妊娠中の体重増加不良がいかに有害となるかを知っている産婦人科の医師は少ないかもしれません。
一般の産婦人科医が診る赤ちゃんは、元気に生まれ、生後しばらくで退院していく赤ちゃんがほとんどです。

妊娠中の体重増加不良があったものの、ちょっと小さい以外は何の問題も無いと産婦人科医が判断した赤ちゃんが、いまごろ生活習慣病で苦しんでいるかもしれません。
Barker仮説やDOHaDの概念は、内科医、小児科医は勿論のこと、産婦人科医の間でも十分認知され、検討されるべき事柄だと思います。
産婦人科医がBarker仮説、DOHaDについて十分認知していれば、妊婦健診での体重管理には「ゆるやかな指導」が成されているはずです。

(4)医療従事者からの情報提供について

母親の「やせ」や、妊娠中の体重増加不良が及ぼす害について知っていても、母親の精神的な安定を優先し、敢えて伝えない医療従事者もいるかもしれません。
母親の「やせ」や妊娠中の体重増加不良が、妊娠合併症や母親のもともとの病気によるものである場合、その傾向は顕著になるでしょう。
生活習慣病の一次予防、二次予防のためには、子宮内低栄養の有無が重要な情報となります。
医師の目から見て、明らかに子宮内低栄養の影響で低出生体重児を出産したと思われる母親に対しては、情報提供が必要でしょう。