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摂食障害での子育て

「子育てで忙しくなれば過食は止まるかも」そう思ったことはありませんか?
子供ができるという環境の変化によって一時的に症状が止まる例はありますが、病気の根本が治ったわけではなく、症状が再び出始めることがほとんどです。

摂食障害である多くの人にとって病気でありながら育児をすることはとても大変なことで、症状を出しながら育児をしている人がほとんどです。
過食や過食嘔吐、下剤を日常的に使いながら家事育児をこなすことはどれくらい大変なことなのでしょうか。

育児中に症状が出ることの大変さ

どんなに忙しくても食べたい衝動は自分の力で消すことはできません。
赤ちゃんと一緒の生活の中、症状が出るとどうなるでしょうか。

  • 生活サイクルの定まらない赤ちゃんに合わせて生活し、心身ともに疲れていても、過食症状が出るときは出ます。ただでさえ疲れているときに症状が出るとくたくたになります。疲れやストレスにより更に症状が出やすくなる、という悪循環にも陥ります。
  • 赤ちゃんが泣いていても、過食衝動が待ってくれなかったらどうなるでしょう。片手で赤ちゃんを抱きながら食べて、赤ちゃんに食べカスがかかってしまう、または泣いている赤ちゃんを置き去りにしたまま食べ続けることになるかもしれません。
    困難な状況で症状を出す疲れ、症状を出した後の赤ちゃんへの罪悪感が加わり、精神的なストレスもピークに達します。
  • 子供がハイハイや歩くことができるようになると、お母さんの後を追いかけてきます。嘔吐をするときにトイレまでついてくるという例も多々あります。子供が見ている前で、過食嘔吐をすることになってしまいます。
    赤ちゃんが将来過食や過食嘔吐を真似するかもしれない、そんな不安を抱えながら過ごすことになるかもしれません。
  • 食べ物が足りなくなっても、赤ちゃんを置いたまま買い物には行けません。子供を連れて何回も買い物に行くのはとても大変ですし、赤ちゃんを連れまわすことになります。
    今後出る症状のことを考えて買い貯めするのも、摂食障害の人にとっては辛いことですよね。

これはほんの一例です。子育てをしながらの症状は本当に大変です。
赤ちゃんがまだ小さい時だけでなく、子供が大きくなるまで大変な生活が何年も続きます。

育児中の症状による心理的ダメージ、罪悪感

まだお母さんにはなっていない方、次のような場面を想像してみてください。
実際に子育てをされている方、次の様な気持ちになったことはありませんか?
育児中の症状がいかに心理的なダメージになり悪循環になっているか、少しの具体例を参考に客観的に見てみましょう。

  • 子供に対して、「まだ起きないで」「静かにしてて」とハラハラしながら焦って過食をするストレス。本当は赤ちゃんには好きな時に起きて好きな時に寝て、のびのびと育って欲しいのに、赤ちゃんをとても愛しているのに、過食のせいで赤ちゃんを邪魔に思ってしまう罪悪感。自分を責める気持ち。
  • もしかしたら子供が真似をしてしまうかもしれない、子供も摂食障害になりかねないと思いながら、子供の前で過食や嘔吐の症状が止められない情けなさ。
  • 甘えてくる子供を優しく包み込んであげたいのに、過食衝動でイライラして子供に当たってしまったり冷たくしてしまう。過食衝動でピリピリした恐いお母さんになってしまう。こんなはずじゃないのに、甘えたい子供に我慢させてまで過食を辞められない情けなさ。
  • 症状が出ている横でじっと見つめる赤ちゃん。
    見ないでと思いながら、でもそんな風に赤ちゃんに対して思ってしまう自分を責める気持ち。
  • 嘔吐をしているお母さんを追いかけてきて、トイレの前で泣いている赤ちゃん。
    我を忘れて嘔吐を止められない自分に対しての後からの罪悪感。
  • 自分の時間が無く、症状が思い通りに行かない、旦那さんにも上手く説明できない。1人で抱え込んでイライラの矛先は大切な子供に。
    解決策が分からず、辛い生活のまま。

健全な家庭を築いていけますか?

過食症はこれから築いていこうとする新しい家族関係にも影響を及ぼすことがあります。

  • 旦那さんにきちんと自分の思っていることを冷静に言えますか。過食してしまう罪悪感、自尊心の低さから、きちんと言いたい事を言えなかったり、逆に怒りをぶつけながらしか思っている事を伝えられないという事も多々あります。
    それを見て育つ子供は健全なコミュニケーションの仕方が分からなくなります。
  • 過食衝動からのイライラから、早く旦那さんに寝て欲しい、一人にして欲しいと思うかもしれません。
    夫婦仲がうまくいっていない事も、敏感な子供は感じ取ります。
  • 子供と2人きりのときに過食衝動と戦い、まともに子供に対応してあげられないとき、旦那さんに報告できますか?
    子供への対応に悩んでいても、自分自身の過食のせいだとは言いづらく、子供と自分の間だけでモヤモヤした関係が続くかもしれません。
    旦那さんは昼間に起こっている事を知ることができず、意思疎通のできない風通しの悪い家庭ができあがります。

子供は感じとっています

子供はまだ話すことも歩くこともできない時期から、お母さんのことを十分感じとっています。
生まれたばかりの子供はお母さんが世の中の全てです。お母さんの行動、言葉、全て吸収します。
赤ちゃんに分からないように症状を出しているつもりでも、赤ちゃんはお母さんの過食や過食嘔吐をするお母さんの辛さを分かっています。

過食や過食嘔吐をしてしまう辛そうなお母さんに赤ちゃんは必要なだけ甘えられるでしょうか。過食したくてイライラしているのを隠していても、お母さんを怖いと感じるかもしれません。
本当は泣きたい、何かを伝えたい赤ちゃんに我慢をさせてしてしまうかもしれません。

赤ちゃんにとってたくさん食べるのが当たり前、吐くことが当たり前になって育ってしまう可能性もあるのです。

育児中の環境

育児中って具体的にどんな環境なんでしょうか。どんな事が起こるのかな?
ほんの少し覗いてみましょう。

お母さん自身を取り巻く環境について

  • 子供がまだ小さいうちは思うように外出ができません。家に居る時間が必然的に多くなり、症状が出やすい環境になります。
  • なかなか外に出て誰かと会う時間も作りにくくなります。接する人がほぼ旦那さんだけになるかもしません。
  • 赤ちゃんの離乳食や家族の食事など、当然料理をしなければなりません。摂食障害の人にとって食材と接する時間が長くなるということは苦痛。子供の食事、夫の食事作り⇒症状が多くなる可能性大。作ったものを残しておけますか?
  • 母乳育児はとても忙しいものです。ストレスがたまります。(出ない、出るけど飲んでくれない、食事制限をしないと乳質が落ちる)
  • 家に居る時間が多い⇒接する人は夫だけになる可能性も。夫が疲れてかまってくれないと不満

赤ちゃんについて

《赤ちゃんが約0~1歳》

  • 子供と2人きり
  • 食べたい、吐きたいのに寝てくれない子供
  • 赤ちゃんはまだしゃべれない頃からお母さんの様子を見て世の中を学びます。
  • 自分の時間がまったくない
  • 出産前の体重になかなか戻せない
  • 生まれたばかりの赤ちゃんは寝る時間と起きる時間も定まりません。数時間寝て、数時間起きてを繰り返すことがほとんどです。あなた自身もその生活サイクルに合わせることになります。生活サイクルが乱れると症状も出やすくなります。

《赤ちゃんが約1歳以降》

  • 外出中、吐きたくなったら一緒にトイレに入らなければならない
  • ハイハイしたり歩けるようになり、後追いが始まると自由に食べたり吐いたりできなくなる
  • 後追いするようになると、常にお母さんの過食嘔吐の姿を見ることに
  • 食べ吐きの行為の途中で子供に中断されることも多くなる
  • 話せるようになると、お母さんの食べ方に疑問をもつと質問してくるかもしれません。
  • 長時間台所に立つおかあさんに「かまってほしい」と甘えてくる

子供の将来

摂食障害を抱えながら余裕の無いお母さんを見て、必要なだけ甘えられなかった子供はどのようになる可能性あるのでしょう。

  • 常に親や周囲の人の機嫌を伺ったり、気を遣うようになるかもしれません。
  • ちょっとしたことでも傷つきやすい繊細な子になるかもしれません。
  • 辛いことがあっても人に伝えられず、自分の中に貯めこんでしまう子になるかもしれません。

詳しくは次のページ「世代間連鎖について」を読んでみましょう。