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心の病気の『世代間連鎖』

親が心に問題を抱えていたり依存症である場合、その子供もまた摂食障害やその他の依存症になる可能性が高いです。
この様に心の病気が世代間で連鎖することを”世代間連鎖”と読んでいます。
ここではそのしくみについて紹介しています。

赤ちゃんにとってのお母さんの存在

赤ちゃんにとって生まれてから数年は、お母さんが世の中の全てです。お母さんに必要なことを伝え、必要なことをしてもらい、感情を表現し、自分以外の他者(両親)と心をかよわせ、自分という存在を実感していきます。
お母さんの考え方や感情の動き、ほとんどを吸収し、成長していきます。

お母さんの心の安定の大切さ

子供はお母さんに対して安心して感情表現できる環境が必要です。その為には在る程度お母さんの心の安定が必須になってくるでしょう。感受性の強い子供はお母さんが顔で笑っていても心で泣いたり怒ったりしている事に気づきます。

  • お母さんが過食や心の問題でいつも辛そうだと子供が感じると、気を遣うようになります。子供が本来喜び、悲しみ、怒り、寂しさなど、感情を表現する事を覚える過程を健康的にたどれなくなります。小さい時に自分の感情に蓋をする癖がついてしまったり、自分で抱え込んでしまう子になると、将来心の病気になる可能性が高くなります。
  • 人間の考え方や感じ方は幼少期のお母さんとの関係で基礎ができるといっても過言ではありません。
  • お母さんが辛そうなのは子供にとっても辛い事。子供らしい欲求も伝えられず、お母さんに迷惑をかけないようにお母さんにとって”都合の良い子”にならざるをえなくなるかもしれません。

《サイレントベイビーって知っていますか?》

サイレントベイビーとは、泣いたり笑ったりなどの感情表現がとても少ない赤ちゃんのことで、大人になってからも心理的に未成熟なままになってしまう可能性、摂食障害やその他の心理的な病気になってしまう可能性も高いのです。

生まれたばかりの赤ちゃんは話す事も動く事もできません。
泣いたり笑ったり、言葉の無い表現でお母さんにして欲しいことを求めます。そうするうちに「楽しい」「悲しい」「嬉しい」「辛い」「気持ち良い」「痛い」など、健康な人間として生きていくための感情や感覚が育っていきます。

サイレントベイビーはお母さんとのコミュニケーションやスキンシップが不足することなどでなってしまうそうです。
過食症状で心理的に余裕がなく、赤ちゃんを放置してしまったり、優しく話しかけることができなくなると、もしかしたら赤ちゃんはサイレントベイビーになってしまうかもしれません。

先ほど紹介したように、赤ちゃんはお母さんの全てを感じ取っています。お母さんの気持ちまで感じ取っている可能性も大いにあります。
顔で笑っていても、お母さんの心が本当は辛い状態であれば、それも感じ取っているかもしれません。言葉で言っていることと思っていることが違うことなんかも、実は簡単に見透かされている可能性が高いです。

過食症状が出てしまうほど心に余裕のないお母さんに対して、思いっきり泣いたり、笑ったり感情表現できるでしょうか。

苦しい考え方・生き方の子供への連鎖

摂食障害等の依存症が発症している場合、無意識の部分で苦しい生き方、考え方、感じ方をしています。子供には自分と同じ苦しみを味わってほしくないと頭で思ってはいても、自分の意思に反して自分と同じ苦しい生き方や考え方を伝搬させてしまうことが多々あります。

摂食障害である本人が自分自身の苦しい生き方に気づいていない事がほとんどです。気づいているとしてもそれはほんの一部であることが多いです。

親から伝搬されたことは子供の基盤となっていきます。子供もそれが当たり前になり、気づかぬうちに苦しい生き方をしていくことになり、子供も心の病気になる可能性が高くなります。

生き辛い考え方のほんの少しの例をあげてみます。

  • 失敗してはならない
  • 自分は今のままではダメだ
  • 私は価値の無い人間だ
  • 人に嫌われるのが恐い
  • 人に迷惑をかけてはならない
  • 人に頼れない、等。

心の根本の部分を回復させない限り、これらの感じ方、考え方は簡単に消え去るものではありません。

辛い考え方や感じ方をもっていると、普通に生きていくことが辛くなり、心の限界を越え、何かのきっかけで摂食障害やその他の依存症を発症する可能性が高くなります。

過食衝動がありながらの子育て

上記に記した心の根本の問題はとても重大なことですが、すぐにはピンとこないかもしれません。
では実際に過食衝動をもちながら子育てをすることを考えてみましょう。あなたは子供に十分な愛情をかけてあげることができますか。

  • 食べ物のことで頭がいっぱいになっていると、どんなに可愛い子供のことでもうっとおしく感じるかもしれません。
  • 子供が泣いている時、過食症状のせいで傍に行ってあげられなかったら、「助けを求めても助けてもらえないんだ」「助けを求めても伝わらないんだ」という世の中に対しての感じ方が子供の中にできてしまうかもしれません。
  • 過食が自由にできないことで、イライラを子供にぶつけてしまうことがあれば、子供は何故お母さんが怒っているのか、何故自分が怒られたのか分からないままです。子供は「お母さんが怒っているのは自分のせい、お母さんが辛そうなのは自分のせい」と捉えてしまいます。
    大人になってからも、何も悪い事をしていないのに罪悪感を抱いたり、何かにつけて申し訳ない気持ちを抱く人に成長してしまうかもしれません。
  • 過食でお母さんがいつもピリピリしていると、感受性の強い子供は自然にそれを察し、困ったことがあっても我慢したり伝えられない状態になるかもしれません。それが世間への考え方に投影されると、言いたい事や伝えたい事が伝えられない子になってしまいます。
  • 子供が健康に育つには、親が子供自身の全部を受け入れ、成長を励まし、存在を肯定してあげることが必要です。過食でイライラして子供を叩いてしまったり、継続的に直接手を下すようなことがあると、子供は心に傷を負います。
  • 子供は生きていく為に親を頼りにしています。不安なときや辛い時に、親が過食衝動が抑えられなくて関心を持ってくれない、見守ってくれないとどうなるでしょう。
    子供は人に対する信頼感を持ちづらく、困ったことがあっても誰かに助けを求めることができず、自分一人で解決しようとしたり、辛い感情や感覚自体を鈍磨させていく原因にもなります。

世代間連鎖を防ぐには

世代間連鎖は過食する現場を子供に見せなければ防げるものではなく、子供を叩いたりしなければ大丈夫という単純なものでもありません。
ここには書ききれないほど沢山の複雑な要因が絡み合って世代間連鎖は起こります。

世代間連鎖を防ぐには摂食障害本人の心の回復が必要です。
あなたが今からでも過食症を根本から回復させることで今後あなたの元に生まれてくる子供への世代間連鎖を防ぐことができます。
今既に子供が居て子育て中の方も、あなた自身の心を回復させることで、世代間連鎖が起こる可能性を低くすることができ、ご家族にも良い影響を与えることは間違いありません。