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【17】-10 摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠に対する医療従者の心構え

(1)「サポートする」姿勢が重要

医療者側の心構えとして、特に重要になるのは、妊婦さんの摂食障害・過食症・拒食症を「暴く」のではなく、摂食障害を抱えた妊婦さんを可能な限りサポートする、という姿勢です。
母親が摂食障害・過食症・拒食症を患っているのであれば、おなかの赤ちゃんに良くないと分かっていても、過食・過食嘔吐・ チューイング・下剤や利尿剤の誤用を自分では止められませんし、コントロールできないものなのです。
時には吐くために赤ちゃんのいるおなかをギュウギュウ押してしまうこともあります。
産科医や周りの医療者に黙って、便秘薬・下剤、利尿剤を使ってしまう場合もあります。
慢性腎疾患の方が血尿やたんぱく尿を自分ではコントロールできないのと同様に、摂食障害・過食症の方には、過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や利尿剤の誤用をコントロールすることができません。

妊婦自身の病識の乏しさへの注意

そして、摂食障害・過食症・拒食症の恐ろしいところは、テキトウな理由でごまかして、当事者にもよく分らないまま、妊娠しているのに、うまく体重が増やせなかったり、どうしても吐いてしまう、下剤や利尿剤を使ってしまう、というところにあります。
病識に乏しいという病気としての特徴があり、やせ衝動、肥満恐怖、過食のスイッチが入るのが怖い、など、摂食障害に特徴的な症状、感じ方を、はっきり自覚できていない方も多いのです。
なぜ自分がこんなことになっているのかよく分らないまま、自分を責めることしかできず、 どんどん深みにはまっていくのが摂食障害・過食症・拒食症なのです。
おなかの赤ちゃんにとっても、母体である自分自身にとっても、いかに過食・過食嘔吐・チューイング・下剤や利尿剤の使用が危険なのかを理解していても、やめらなれない・とまらないのが摂食障害、過食症、過食嘔吐の病気の恐ろしさであり、病気たるゆえんです。

(2)医療側が正しい認識を身につけ、連携すること

本来、摂食障害・過食症・拒食症を抱え、病気の状態で妊娠する前に、まず摂食障害を治すのが先です。
しかし、現実には、妊娠中に摂食障害・過食症・拒食症を発症する方もいますし、自分が病気だとは思わずに妊娠に至る方もいることでしょう。
そうしたとき、医療者としてできることは、摂食障害・過食症・拒食症などの病気を疑い、その可能性を考慮に入れながら患者さんを診療して行くことです。
診断後に何ができるかは、精神科医、カウンセラー、産科医、助産師、内科医、小児科医、保健士など、役割によって異なるでしょうが、それぞれの連携も必要になってきます。
産科の医師としてできることは、まず、摂食障害・過食症・拒食症合併妊娠が、決してカンタンなものではなく、数々の危険を孕むハイリスク妊娠である、と正しく認識することでしょう。
そして、妊娠という変化が加わったときの摂食障害・過食症・拒食症らしい症状について知り、数々のリスクが具体的にどういった妊娠合併症と結びついているのかを知ることです。