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【9】-17 母体の「やせ」の問題点

(1)重篤な病気の発端となる

胎児は生き延びるために子宮内の低栄養に適応します。
しかしその結果、生まれた後に高血圧・高脂血症・2型糖尿病・肥満などの生活習慣病を発症しやすくなるのです。
生活習慣病は動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などの重篤な病気につながります。
心筋梗塞で亡くなった方の病気のもとをたどっていくと、それは、その方が母親のお腹の中にいる時の子宮内の低栄養に端を発している場合があるのです。
子宮内低栄養の原因が母親の「やせ」であった場合、母親の「やせ」が子どもの生活習慣病のもととなり、子どもの将来の心筋梗塞を引き起こした、ともいえるでしょう。

(2)低出生体重児が問題なの?

では、低出生体重で出生した方は、全員生活習慣病の素因を抱えているのでしょうか?
答えは否でしょう。
子宮内低栄養が無くても、体質的な要因で低出生体重児として出生する方もいるでしょう。
ことの本質は、低出生体重児であったかどうかではありません。
子宮内低栄養があったかどうかです。

母親に「やせ」や妊娠中の体重増加不良があった状態で、子どもの出生体重が、2500g以上3000g未満だったとします。
その子どもは低出生体重児ではありません。
しかし、母親に「やせ」が無く、妊娠中の体重増加が良好であったならば、その子どもはもっと大きくなっていたはずです。
その子どもは将来生活習慣病になりやすい可能性があります。

(3)子宮内低栄養の有無

将来の生活習慣病発症に関与するのは、子宮内低栄養の有無です。
妊娠前、母親に「やせ」があったかどうか。
妊娠中の体重増加はどうだったか。
妊娠中、胎盤機能の低下するような妊娠合併症があったかどうか。
子ども側に体格が小さくなる要因があるかどうか。

これらの情報が、子宮内低栄養の有無の手掛かりとなるでしょう。
胎児期に子宮内胎児発育不全があった方は、ほぼ間違いなく子宮内低栄養があったものと思われます。
また、ここでは、母親1人に対して子ども1人の単胎出生を前提としています。
双胎以上の場合は、子宮内の環境が単胎と全く異なり、出生体重と生活習慣病との関与の詳細は不明です。
双胎以上の子どもと子宮内低栄養との相関をあらわすものについて、今後の調査研究で分かってくるでしょう。