【9】-28 摂食障害の妊婦さんにできること
(1)早急に、がまんせずに症状を止める
摂食障害を患った状態で妊娠してしまった妊婦さんに出来ることが二つあります。
ひとつは、しかるべき治療機関で、なるべく早く、がまんせずに摂食障害の症状を止めることです。
過食・過食嘔吐・チューイングなど摂食障害の症状は、妊娠分娩経過に大きく影響します。
しかし、やみくもに自己流で症状を止めても、我慢が爆発して余計に症状が増えるでしょう。
ストレスがたまって早産につながるなど、妊娠経過がさらに不安定になる可能性があります。
自分では症状を止められないから病気なのです。
しかるべき治療機関で、がまんすることなく症状を止められれば、症状に関する罪悪感やストレスから解放されます。
過食嘔吐などの物理的な圧迫が無くなることは、お腹の赤ちゃんにとって喜ばしいことです。
そればかりか、母親の心理状態が好転することで妊娠分娩経過が安定し、お腹の赤ちゃんの安心や安全につながります。
がまんせずに摂食障害の症状を止められる治療機関を頼ってください。
(2)産婦人科医に摂食障害であることを伝える
もうひとつは、産婦人科医に摂食障害の症状について伝えることです。
産婦人科医が、あなたのことを、なんらかのリスクがある妊婦さんであると認識している場合、なにかあったときに、より迅速な対応につながります。
産科救急疾患は、迅速な対応が母児の予後を大きく左右します。
摂食障害は、医療従事者にすら理解が得られにくい病気です。
摂食障害を理解してくれる産婦人科をみつけることは、非常に難しいことです。
摂食障害にまつわる妊娠分娩経過の異常について知識のある産婦人科医をみつけましょう。
(3)「摂食障害合併妊娠」が見過ごされないために
摂食障害の患者さんは、過食や過食嘔吐、チューイング症状がある自分を恥じる意識が強いようです。
摂食障害がある上で妊娠したことに後ろめたさを感じている場合もあります。
病識に乏しく、自分自身が摂食障害であることに気付けていない場合すらあります。
過食嘔吐をする以外に「変な癖」は自分に無いし、自分は全くの健康体だと思い込んでいる方もいることでしょう。
摂食障害の症状があっても、それについて産婦人科医に伝えることができる妊婦さんは、かなり少ないでしょう。
摂食障害合併妊娠であることを、産婦人科医・医療従事者が認識できないままに見過ごされているケースがかなりの数あるはずです。
摂食障害合併妊娠に伴う危険が、十分検討されることなく、見逃され、放置されているのです。
見逃され、放置されて、事態をどんどん悪化させてしまうのは、摂食障害の病的な心性に結び付くところです。
この摂食障害の病的な心性を、医療従事者が汲んでしまう事態を避けなればいけません。
患者さん自身も医療従事者も、摂食障害がある上での妊娠がいかに危険かを知る必要があります。
そして産科医師は、自分が何の問題も無いと思っている妊婦さんが摂食障害を合併している場合もある、と知っておいて下さい。